64.8%・・・この数字はなにを表しているものか分かりますか?

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裁判所、そこは法によって裁きを受けたり喧嘩を仲裁してくれたりする場所です。5月27日の日経新聞に次のような記事がありました。

裁判員裁判の出席率が低下している」と。タイトルの64.8%と裁判員裁判の問題。何が共通しているのか見ていきましょう。

 

裁判員制度とは

裁判員制度とは2009年に始まった新たな司法制度です。刑事裁判に市民の意見を反映させることを目的に始まった制度で、2017年で8年を迎えました。裁判員裁判で対象になるのは「地方裁判所で取り扱う刑事事件のみ」です。

また、死刑または無期懲役に該当するような事件や法定合議事件かつ故意の犯罪行為で被害者を死亡させた事件の2つが対象となっており、事件数が多い麻薬関連は裁判員裁判の対象外となっています。
※法廷合議事件とは法律上、合議体で判断したほうが良い事件のこと

裁判員制度が抱える問題点

1. ストレス障害をかかえやすい

裁判員制度の場合、一般市民が裁判に参加することで市民意見を反映させやすくするという理由があり、裁判所から選ばれた人が裁判官となり参加します。ここで対象事件を思い出してください。

裁判員裁判の対象事件は「死刑または無期懲役」に値するとされる事件です。多くの場合、殺人事件などが該当します。裁判では公平に処さなければなりませんので、被害者の死亡画像などが鮮明に映されます。

ここで強いストレスを抱えてしまい、退任後、ストレス障害を抱えやすくなってしまうのです。この点は本職の裁判官も同じですが、一般市民にそこまでする必要はあるかと疑問を感じます。

2.  市民意見が反映されにくい

裁判員裁判地方裁判所、すなわち第1審のみ対象です。日本では3審制度を採用していますから、裁判員裁判で出された判決がひっくり返り無罪になってしまうこともあり得ます。

よほどおかしな点が無い限りは判決はひっくり返されないのですが、第2審以降のことを考えると欠点といえるでしょう。ちなみにアメリカの陪審制度では、市民が出した判決をひっくり返すことはできません。

日本にもそういう制度があればいいんですが・・・。

64.8%・・・あなたは何の数字だと思いますか?

タイトルで出てきた「64.8%」。この数字、実は「裁判員裁判に出席している人の割合」なのです。裁判員裁判は原則的に呼び出されれば、必ず出頭しなければなりません。

一部、例外規定も認められていますが、辞退が認められるのはほんのわずかです。2017年5月27日の日本経済新聞(朝刊)には次のような記載がありました。

最高裁によると、2016年の裁判員候補者から裁判に参加する人を選ぶ手続きに出席した割合は64.8%と、過去最低を更新した。

(引用元:日本経済新聞(朝刊)5月27日付け)

64.8という数字は裁判員裁判に出る人を選ぶ手続きに参加した人の割合を示すもので、裁判員制度がスタートしてから年々、下降傾向にあります。最高裁判所がまとめたデータによると09年のスタート当時は90%近い参加率だったのに対し、16年は65%と25%も下がっています。

この背景には審理の長期化があるとされています。取り扱う事件が複雑さを増し、論点の整理などが追い付かず、拘束期間が長くなっているのは事実です。しかし、果たして本当にそれだけが理由なのでしょうか。

私は社会に問題の本質があると思います。少し前に電通の労働問題が話題になったことは記憶に新しいでしょう。あれは、ひとつの会社が抱えきれるキャパシティーを超えた仕事量を受注したが故に起きた問題です。そして過重労働に繋がり、精神を追い詰められ自らの手で命を絶ってしまった。

これは日本社会が抱える問題のひとつであり、本質だと考えます。企業の行動原理は利潤の最大化です。利潤最大化を目指すのであれば、企業はどんな小さな仕事でも受けざるを得ず、結果としてキャパシティーを超えてしまい社員(労働者)を苦しめてしまう。

では、裁判員裁判にひとりの社員が呼び出されて1週間拘束されてしまったらどうなるでしょうか。会社はひとりの社員の穴埋めをしなければいけなくなり、ほかの社員の負担が増えてしまいます。結果、電通事件のような過重労働に繋がってしまう恐れも出てきます。

どうしても刑事裁判に一般市民の意見を反映させたいのであれば、「拘束期間を3日程度にする」や「負担が軽い事案に切り替える」などの対策を打ち出すべきです。審理を充実にするためには慎重な審理は必要です。

本人には休業補償として1万円程度の日当が与えられますが、会社や従業員に対しての補償はありません。

最高裁判所が出した64.8%という数値。この数値を裁判所がどのように受け止め、どう組織改革をしていくかで今後の未来は変わっていくといっても過言ではないでしょう。

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